​第4回国際シンポジウム登壇者紹介

​ポール・シェンプ氏の紹介

【シンポジウム発表要旨】

「熟練コーチの特徴と特性」

 

 熟練したコーチは、手強い対戦相手が挑んできたときでも、常々勝ち名乗りをあげる。では、達人コーチと簡単に負かされてしまうコーチをわける要素とは一体何であるのか? 一流コーチたちについての包括的な研究によって、熟練コーチたちに共通するさまざまな特徴と特性が次々と明らかにされてきた。そうした要因の多くは、スポーツ競技・種目を問わず、あらゆるコーチの熟達を向上させるコーチ育成プログラム(coach develop program)に統合することが可能である。本プレゼンテーションでは、熟練コーチの以下の特性、すなわち「(a)性格特性(personality traits)」「(b)分析スキル(analytic skills)」「(c)意思決定戦術(decision making strategies)「(d)コミュニケーション(communication)」「(e)自己モニタリング(self-monitoring)」に関する研究から、重要な点をお伝えすることにしたい。

​【略歴】

ポール・シェンプ 博士( Paul Schempp, Ph. D. :米国 ジョージア大学教育学部 教授)

ポール・シェンプ氏は、1981年にボストン大学で博士号を取得し、ケント州立大学助教(1981-85年)、オレゴン大学准教授(1985-91年)を経て、1991年より米国ジョージア大学教育学部運動学科で研究教授を務めている。とりわけ「熟達(Expertise)」について研究を進めており、「人間は熟達を持って生まれるのではなく、むしろ正しい方法で考え、行動することで、熟達し、成功へと至ることができる」という強い信念を抱いている。

 2004年に「パフォーマンスエクセレンス国際研究センター」より優秀学術研究者に選出されており、パフォーマンスに関して豊富な知識を有する。ジョージア大学の研究教授およびスポーツ・インストラクション研究所所長として10年に以上に渡り熟達の特徴とその発展について研究を行ってきた。そのなかで、ビジネス、教育、スポーツにかかわる個人や組織の助けとなるメッセージを送り、生産性の向上、よりよい意思決定、熟達したパフォーマンスを伝えるきっかけを与えてきた。

 また、パフォーマンス・マターズ社の代表として、講演者としても活動しており、コーチやコンサルタントなどを行っている。これまで6冊の著書を出版しており、『5 Steps to Expert: How to Go from Business Novice to Elite Performer(熟達への5つのステップ:ビジネス初心者からエリートパフォーマーになるために)』では受賞経験がある。また、90本以上の論文や記事、26カ国で延べ250回以上の講演を行っており、国際的にも高い評価を受けている。ドイツのフランクフルト大学で上級フルブライト学術研究員やシンガポールのナンニャン技術大学で客員教授も務めた経験があり、またこれまで三大陸で約25の大学で講義を行ってきた。

 ビジネスや産業分野において講演を行うだけでなく、自らの研究を応用することでスウェーデンゴルフ連盟やゴルフのメキシコ代表チームのパフォーマンスプログラムの作成にもかかわる。さらに、PGAゴルフツアーの優勝経験者数人を指導した経験を有する。

 

 

【著作】

Paul G. Schemmp and Peter Mattsson (2014), Golf Steps to Success, Steps to Success Activity Series, Human Kinetics

Paul G. Schemmp (2012), 5 Steps to Expert: How to Go from Business Novice to Elite Performer, Performance Matters Press

Paul G. Schempp (2003), Teaching Sport and Physical Activity: Insights on the Road to Excellence, Human Kinetics

 

【参考】

https://coe.uga.edu/assets/files/misc/profile/pschempp_vita.pdf

http://www.performancemattersinc.com/

​ポール・シェンプ氏のプロモーション映像

​ポール・シェンプ氏の講演の様子

ラルフ・ピム氏の紹介

【シンポジウム発表要旨】

​「スポーツにおける偉大さの文化の構築」

 偉大さのレベルに達しているチームはわずか数えるほどしかなく、大抵のチームは平凡なレベルに留まっている。高いレベルでのパフォーマンスを示すチームにおいて、そのチームを至高の存在にしている要素とは何であるのか? ヨーロッパ、アジア、北米にある365の企業に対するベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、およそ70%のリーダーたちが文化は競争的優位の最大の源をもたらすと信じていながらも、〔実際に〕高いパフォーマンスを示す文化を構築することに成功している企業は10%に満たない(Rogers, Meehan, Tanner, 2006, p. 1)。

 このプレゼンテーションの目的は、偉大さを目指す文化を構築するための実践的な手引きを提供することである。The TLC Framework for Greatness™ (TLCF)は、多大なる業績を挙げているリーダーたちやチームの極めて優れた実践と、陸軍士官学校運動部モデル(the West Point Competitive Sport Model)の原理に基づいている。T、L、Cは偉大さの三つの要素、つまり、才能(Talent)、リーダーシップ(Leadership)、性格(Character)を表している。TLCFは、内なるリーダーを認識する。誰しもが、偉大さの次のレベルに達するための鍵を持っている。TLCFによって、人は卓越性のために必要とされる振る舞いを特定できるようになり、偉大さを生み出す価値と信念を涵養することができるようになる。

 「文化(Culture)」は、メッリアム=ウェブスター辞典(Bersin, 2015)によれば、2014年に最も人々を惹きつけた単語だった。では、文化とはそもそも何であるのか? 「誰も見ていないときに起こること(what happens when nobody is looking)」と文化のことを言い表す人がいるが、それではかなり込み入っている。文化とは、チームにいる全員の創造的な総体にほかならない。それは、共通の価値観、信念、振る舞いのことである。あらゆるチームが文化を持っており、その文化が生じるのは、それを構築するための組織的な努力によるか、あるいは偶然によってである。大抵のチームは、いわゆる運営マニュアルのなかで自分たちの展望(ヴィジョン)、使命、価値観、指導原理を記している。しかし、大抵の場合、それは単なる文字の羅列にすぎない。チームの振る舞いこそが、実際の成果を生み出すのだ。

 The TLC Framework for Greatness™は、文化は相互に連携して調和しなければならない三つの極めて重要な部分(つまり構造、プロセス、人々)から成り立っていると認めている。構造的な部分には、抗し難い展望(ヴィジョン)、強力な目的、共通のコアバリュー、スタンダード、結果などが含まれる。構造は、強力で物事を可能にする基礎を与える。プロセスは、求めた結果を達成するために為される行動や活動のことである。それにより、継続的な発展が促進され、絶え間なくかつ効果的になされるさまざまな事柄は確実なものとなる。最も重要な部分は人々および人々がチームのなかでどう機能するかである。構造とプロセスを動かすのは、人々にほかならない。

 今日のプレゼンテーションでは、文化を構築し、維持するための「計画表(ロードマップ)」を提供したい。究極的には、文化はリーダーシップによって動かされる。チームにいる全員に、リーダーシップを持つという責務がある。人々が評価すること、人々が言ったこと、人々がどのように振る舞うかによって、文化は動かされる。文化を動かし、活気づけることは、ある環境を作ることを任せられたリーダーたちに支えられている。その環境とは、チームのメンバーたちが、なぜ自分たちが今やっていることを現に行っているのかを理解し、それがいかにして重要なのかを明確に見定める、そうした環境である。リーダーたちは、自分たちよりも大きな何かの欠くことのできない部分であることを受け入れており、また彼らの振る舞いは、チームの展望(ヴィジョン)、目的、コアバリューといった言葉を反映しているのである。

参考文献

References Bersin, J. (March 13, 2015). Culture: Why It’s the Hottest Topic in Business Today. Forbes.com

Rogers, P., Meehan P., Tanner, S. (2006). Building a Winning Culture. Bain and Co.

​【略歴】

ラルフ・ピム( Ralph Pim, Ph. D.:元・米国陸軍士官学校体育学部 教授 )

講演題目「スポーツにおける偉大さの文化の構築」

 

 ラルフ・ピム氏は、1972年にスプリングフィールド大学で学士を取得し、1973年にオハイオ州立大学で修士号を取得した後に、1981年にノースウェスタン州立大学で博士号を取得。その後、セントラル・ミシガン大学准教授、バスケットボール部アシスタントコーチ(1978-86年)、アルマ大学バスケットボール部ヘッドコーチ(1989-92年)、アメリカ合衆国陸軍士官学校体育・競技スポーツ学部教授、運動競技部ディレクター(2000-12年)を経て、現在はニュージーランドのスポーツ・ニュージーランドや米国ミネソタ大学サッカー部のスポーツコンサルタントとして国際的に活躍している。

 陸軍士官学校では、運動競技部のディレクターとして27の運動競技部に所属する延べ3500人の士官学校生アスリートたちを監督してきた。また同校においては、価値基底的な教育スポーツカリキュラムを作成し、そのカリキュラムは優れた業績を生み出し、世界的に認知されるようになった。2008年には、ピム及び彼のスタッフたちが所属していた「米国陸軍士官学校体育・競技スポーツ学部」が、性格発展・リーダーシップの原理・勝利への心構え・強いチームの構築に寄与するプログラムの作成や、「Mike Krzyzewski Teaching Character Through Sport Award(マイク・シャシェフスキー記念スポーツ人格教育賞)」の設立などが高い評価を受けて、国際スポーツ研究所(Institute for International Sport、1986年設立)の「米国における15の有力スポーツ教育チーム」に選出されている。

 また、ニュージーランドでは、グレーター・オークランド・コーチング・ユニット(GACU)などでワークショップを多数開催し、現在に至っている。なかでもリーダーシップ論についての講演は高い評価を得ている。また、リーダーシップについても多数の優れた著作をこれまでに刊行している。

 

【著作】

Ralph Pim (2009), Perfect Phrases for Coaches: Hundreds of Ready-to-use Winning Phrases for any Sport--On and Off the Field, McGraw-Hill

Don Casey and Ralph Pim (2007), Own the Zone: Executing and Attacking Zone Defenses, McGraw-Hill

Tom Crean and Ralph Pim(2006), Coaching Team Basketball: A Coach’s Guide to Developing Players With a Team-First Attitude, McGraw-Hill

Jerry Krause and Ralph Pim (2006), Basketball: Beyond the X's and O’s, Coaches Choice

Ralph L. Pim, Jerry Krause (2005), Basketball Offense: Lessons from the Legends, Coaches Choice(邦訳:倉石平監訳(2010)『バスケットボール・オフェンス・レッスンズ・フロム・ザ・レジェンド』、社会評論社)

Jerry Krause and Ralph Pim (2005), Basketball Defense: Lessons From The Legends, Coaches Choice(邦訳:倉石平監訳(2010)『バスケットボール・ディフェンス・レッスンズ・フロム・ザ・レジェンド』、社会評論社)

Ralph Pim (2004), Winning Basketball, 2nd Edition: Techniques and Tips for Playing Better Offensive Basketball, McGraw-Hill

 

【参考】

http://www.quantumsport.com/announcements/dr-ralph-pim-visit-professor-of-physical-education-director-of-competitive-sports-united-states-mili

https://www.youtube.com/watch?v=bbk2pd4qEeU

コーチングについて語るラルフ・ピム氏

ラルフ・ピム氏の講演の様子

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