コーチデベロッパーとは?
コーチデベロッパーは、誤解を恐れず簡潔に表現すると「コーチのコーチ」と言うことができるでしょう。
平成27年度コーチ育成のための「モデル・コア・カリキュラム」作成事業報告書(公益財団法人 日本体育協会(当時))では次のように言われています。
「コーチ・デベロッパーは単に経験豊かなコーチやコーチングの知識の伝道者であるだけではない。彼らはポジティブで効果的なスポーツ体験をすべての参加者に提供するために、コーチを育成・支援し、彼らが知識やスキルを磨いたり向上したりするのを促すトレーニングを受けた者である」
現在では、日本スポーツ協会や日本バスケットボール協会などがコーチデベロッパーを養成し、講習会でコーチの学びを支援しています。
【参考Web記事】(SANSPO.COMより)
コーチ育成者を養成へ スポーツ協会が初の試み
「近年、指導者による暴力やパワハラ、セクハラなどの問題が相次いだことを受け、日本スポーツ協会は2019年度から指導者養成の講習に新カリキュラムを導入し、コミュニケーション能力などを伸ばすことを重視する内容に変える。コーチデベロッパーは新たな講習で中心的役割を担う」(Webより引用)
【参考資料】(日本バスケットボール協会HPより)
2019年度からのコーチライセンス制度改定のご案内
「⑥コーチデベロッパーの養成
知識や技術・戦術の指導力だけではなく、人間力を兼ね備えた指導者を養成するための人材を養成(C級・D級コーチ養成講習会の講師を担当)」(Web資料より引用)
【諸外国の事例】
「カナダコーチング協会は「コーチデベロッパー(過去には「学習ファシリテーター」と呼ばれていた)がコーチ育成プログラムの講師としてセッションを担当している」(伊藤(2017: 24-25))
競技団体の例として、世界ラグビーや英国サッカー協会が「コーチデベロッパー」あるいは「コーチエデュケーター」と呼ばれる人材を養成し、コーチ育成をフルタイム、もしくはパートタイムで行うシステムを構築している」(伊藤(2017: 25))
また、オーストラリアの南オーストラリア州では、コーチデベロッパーがコーチの現場に出向き、コーチの資質能力向上を支援する取り組みが行われています。
さらに、民間の会社レベルでもコーチデベロッパーとしてコーチの成長を支援する取り組みがあります。例えば、カナダでは、COACH+(コーチプラス)と呼ばれる会社が、そのようなコーチの支援を業務として行っています。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=82&v=IaHxUAxKcgs&feature=emb_logo
(参考資料、YouTube(英語:1分半))
【ICCE(国際コーチングエクセレンス評議会)のコーチデベロッパーに対する取り組み】
ICCEは、2014年に『国際コーチデベロッパーフレームワーク( International Coach Developer Framework )』(英語)を刊行しています。
そのなかでは次のような内容について触れられています。
導入:コーチ育成への第一歩
(Introduction: A step forward for coach development)
第1章:コーチデベロッパーの役割
(Chapter 1: The role of coach developers)
第2章:コーチの学びを支援すること
(Chapter 2: Helping the coach to learn)
第3章:コーチデベロッパーのパスウェイ
(Chapter 3: Coach developer pathway)
第4章:コーチデベロッパーの基準と資質能力
(Chapter 4: Coach developer standards and capabilities)
第5章:コーチ育成システムの構築
(Chapter 5: Building the coach development system)
この『国際コーチデベロッパーフレームワーク』に基づいたコーチデベロッパーの養成プログラムが、国際コーチングエクセレンス評議会の協力のもと、下記の国々で開催されてきました。
日本
(主催団体:日本体育大学)
シンガポール
(主催団体:スポーツ・シンガポール)
ザンビア
(主催団体:ZAMCOACH360)
アメリカ合衆国
(主催団体:合衆国コーチングエクセレンスセンター)
日本体育大学コーチデベロッパーアカデミー(NCDA) では、これまで41カ国96人のコーチデベロッパーがプログラムに参加しました。現在は、コーチデベロッパーの国際的なネットワークとなっています。
NCDA の2014から2020年までの軌跡
NCDA 2019年度のコーチデベロッパー育成プログラムの様子(7分半)
NCDA 2015年度 紹介動画(日本語版)
NCDA 2015年度コーチデベロッパー育成プログラムの様子 (1分半)
合衆国コーチングエクセレンスセンター コーチデベロッパープログラム(2019年)の様子
【参考文献】
伊藤雅充(2017)「コーチとコーチング」、日本コーチング学会編、『コーチング学への招待』、大修館書店